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【取材レポート後編】「自分が人間として、プロフェッショナルとして成長できるか」OECD東京センター長 村上由美子さん

OECD東京センター長 村上由美子さん取材レポート後編。

明日席がなくなってもおかしくないぐらいハードなゴールドマンサックス時代のお話、そして結婚ご家族のこと。お聞きしたい内容を詰め込んだレポートです。

写真中央: OECD東京センター長 村上由美子氏

OECD東京センター長 村上由美子氏プロフィール: 上智大学外国語学部卒、スタンフォード大学院修士課程(MA)、ハーバード大学院経営修士課程(MBA)修了。その後約20年にわたり主にニューヨークで投資銀行業務に就く。ゴールドマン・サックス及びクレディ・スイスのマネージング・ディレクターを経て、2013年にOECD東京センター所長に就任。OECDの日本およびアジア地域における活動の管理、責任者。政府、民間企業、研究機関及びメディアなどに対し、OECDの調査や研究、及び経済政策提言を行う。ビジネススクール入学前は国連開発計画や国連平和維持軍での職務経験も持つ。ハーバード・ビジネススクールの日本アドバイザリーボードメンバーを務めるほか、外務省、内閣府、経済産業省はじめ、政府の委員会で委員を歴任している。著書に「武器としての人口減社会」がある。

 

「自分も会社が家族という気持ちだった」

Women’s Innovation(以下WI)前編に繋げてお聞きしたいです。日本における会社を大事にする雰囲気や、会社=家族みたいな雰囲気が変わっていく中で、自分が属するコミュニティーが仕事だけだった人は孤立しちゃうんじゃないかって思うんです。このことについては、どうお考えですか?ウーマンズもある意味コミュニティーなので伺いたい質問なんです。

村上由美子さん(以下村上さん):難しい問題だと思うんだけど、日本の場合は1度会社に入ったら「30年います」「35年います」みたいな感じなので、まさに会社が家族みたいなところが多い。私は終身雇用とは真逆のゴールドマンサックスで、いわゆる生き馬の目を抜くみたいな超競争の厳しい会社に入りました。コミュニティーがないかって言ったらそんなことないんです。

写真:ハーバードビジネススクール時代の村上さん

私がハーバードビジネススクールに通っていた際、日本人の同級生のほとんど全員が企業派遣でした。日本の超一流の大企業から社内選抜を経て、ハーバードビジネススクールに送られてきている人がほとんど。皆さんとても優秀でした。私はもちろん個人で行ったのだけど、同級生たちは「会社が家族」みたいな雰囲気で溢れていたんですよ。ところがビジネススクールを卒業して自分たちの会社に帰っていった人たちは、みんな2,3年の間にほとんど全員辞めました。

私は同級生の中でも同じ会社にいたのが長くて、ゴールドマンサックスという会社に、10数年近くいました。競争が激しくて実力と成果主義。いわゆる年功序列なんて絶対ないし、若くても年を重ねていてもそんなの関係なくってとにかくアウトプット。自分が成果を出したものに対して評価が下されることで昇進につながったり、報酬につながったりするピュアな競争社会。

でもそんなゴールドマンサックスにもコミュニティーがあるんです。コミュニティーの中でも個人プレーをする人が必ずしも優秀かって言ったら全然そうじゃなくて、実際に優秀な人っていうのはもちろん個人的な力も強い。1+1を3にする力を持っている人たち。つまり2人しかいないチームが出してきたものが3になったり、あるいは5人で働いているんだけど出してきたものは7になる。そういうことを可能にする人たちが優秀なわけですよ。

だって成果って1人が出せるものを1で出すよりも、2人で一緒に働いて3を出した方が会社にとっても評価が高くなる。そう考えていくと個人の力と成果主義ももちろん重要なんだけど、最終的にMAXの成果を出そうと思ったら1番やりやすいのは個人プレーじゃない。自分の短所や不得意な所を上手く補ってくれる人とチームを組むことによって、2+2が5になったりする。そうするとコミュニティーって結構できるわけですよ。

私は愛着心やゴールドマンの人たちが家族みたいな気持ちが強かったので、意外と違う展開になったっていうのはあります。

写真:ゴールドマンサックス時代、同期と村上さん

「自分が人間として、プロフェッショナルとして成長することができるか」

WI:ゴールドマンサックスで働かれてOECD東京に移られた村上さん。転職もご経験されている中で毎回転職した先での情熱の矛先は、先ほどおしゃっていたオーナーシップをとるところにあるのでしょうか?

村上さん:自分がいかに新しい知識を学べるか。要は同じことをしていて成長しなければつまらないので、楽しくプロとして成長できるかが鍵を握ると思うんです。私の今の仕事はもちろんゴールドマン時代の仕事とは違うけど、新しいことを学ぶ機会も多いし、今まで全くやったことのないような分野の仕事とかもある。そういう意味では楽しいし、自分が人間として、あるいはプロフェッショナルとして成長することができるかっていうことが大きな軸になる。

やっぱりつまんない仕事をやっていたら、可愛い子どもと家族と時間過ごした方がいいと思いますよね。子どもたちの顔を見る時間を削って仕事してるわけだから、それに値するような仕事をしないと自分としてはやっていても面白くない。軸になるのはそこだと思うんです。

WI:少し戻ってしまうのですが、10数年続けられるくらい愛着が湧いて、コミュニティが形成されたゴールドマンサックス。ロールモデルになるような方はいらっしゃったのでしょうか。

村上さん:私はラッキーなことにゴールドマンサックスに入社した際、直属の上司が女性だったんですね。私とあまり年が変わらなくてハーバードビジネススクールの先輩にあたる上司でした。私がその直属の上司のチームに入った時に、彼女は妊娠して産休を取り、復帰して2年経ったらまた2人目の赤ちゃんができたんです。目の前でライフイベントを迎えた上司を見ていたので、根拠はないけど自分でもなんかできるかなって(笑)やっぱり他の人がやっているのを見ていると根拠がなくても自然にできるかなって思っちゃう。

はっきり言って普通だったらできないと思うような投資銀行業界の環境なんだけど、私はたまたま20代の時に上司が2回産休を経験しているのを見ているので、勝手にできると信じていました。実際にやってみると大変なことはいっぱいあったけれども、でも結果から言うとできたんですよ。

もちろん簡単だとは言わないけど、私はたまたま女性の上司が目の前にいて、たまたまライフイベントを私の目の前で迎えてくれたので、ラッキーだった。

写真:お子さんの小さい頃。

日本に帰ってきてから思うのは、日本の女性はこういうロールモデルが少ない。私はたまたまそういう環境にいて、自分も軽い気持ちでできた。日本の場合は周りにいないので、できないんじゃないかと先に思っちゃう。目の当たりにしていないとできないんじゃないかという思いが先に来ちゃう。日本の女性にとってロールモデルがいないっていうのがとても大きなハンデかなと思いました。

WI:出来ないことは何もないという想いをお持ちなのでしょうか?

村上さん:できないことはいっぱいあると思いますけど、たまたま目の前にロールモデルがいたから自然にできるかなって。

「結婚で重要なのはお互いの価値観が共有されているか」

WI:逆に子どもを生まないという選択肢はありましたか?

村上さん:自分がしたくても結婚や出会い、あるいは出産は自分がコントロールできないことじゃないですか。正直言ってこれは神のみぞ知る(笑)どこで出会いがあるかは分からないでしょ。私の場合は子どもを生む決断をしたというより、タイミング的にそうなったっていうそれだけです。

WI:結婚相手の決め手は何だったのでしょうか?

村上さん:1番重要なのは、お互いに価値観が共有されているかっていうことだと思います。癖や習慣は多少改善の余地があるかもしれないけれど、基本的な人生の価値観を大人になってから変えるのは難しい。私にとって1番重要なことは価値観が変わらないことを前提に、この人と一生一緒にいられるか。

WI:村上さんが思う価値観、絶対に大事にしたいポイントは何ですか。

村上さん:自分の人生を考えた時に、欲張りなので家族も仕事も全部やりたい。1回きりしかない人生を仕事だけ、家族だけの時間にするのはもったいない。全部やりたいっていう想いを共通の価値観として分かってくれる人が良かった。

WI:いつでも前向きでい続けるためのマインドセットどうされているのでしょうか?

村上さん:ただ脳天なんです。悪いことは全部忘れる。重要です(笑)悪いことは気にしない。

WI:仕事の失敗談もですか?

村上さん:諦めることも大事。

WI:部下に叱らないのも性格ですか?

村上さん:自分のマネジメントスタイル。失敗することは悪いことじゃない。

失敗したことから学ぶことが多い。日本は失敗に対するペナルティが多いと思うんです。

WI:最後に村上さんの座右の銘はありますか?

村上さん:いつも思うのは楽しくしよう。自分がエンジョイしているのかが重要。

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