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【取材レポート第1弾】「福祉は目的ではなく、手段」「目指しているのはwell-being国家」フィンランド出身 坂根シルックさん

8月20日に多数のメディアや講演会等でフィンランドの働き方や教育を伝え、現在は東京農工大学のリーディング大学院で特任教員として働かれている、フィンランド人の坂根シルックさんに取材させて頂きました。

ジェンダーギャップ指数や男女平等ランキングでは、常に上位に入っているフィンランド。今回のレポートはどのようにして、現在のフィンランド情勢に至ったのかについてお話を伺いました。

今回は

第1弾「フィンランドについて、男女平等になった背景」

第2弾「子育ての特徴」

第3弾「フィンランド人の価値観や大切にしていること」をメインに3回に分けてお伝えしていきます。

坂根シルック(Sirkku Sakane)さん

坂根シルック(Sirkku Sakane)さん:国立大学法人東京農工大学特任准教授。フィンランド語通訳翻訳家。

フィンランド・ヘルシンキ生まれ。3歳のときに初来日、幼少期を大分市で過ごす。小学校卒業後フィンランドに帰国するが、1985年に再来日し、20年間にわたり、複数の在日フィンランド系企業やフィンランド政府機関に勤務。その後フィンランド語通訳・翻訳家及び語講師として活動。

2012年から国立大学法人東京農工大学の「リーディング大学院」で特任教員としてグローバル教育に携わりながら、フィンランドの働き方・子育て・ライフスタイル・男女平等社会・多様性などをテーマに講演活動を行っている。1男1女の母親。

【フィンランドについて】

首都はヘルシンキ。去年独立100周年を迎えた。「森と湖の国」と言われている。

人口およそ550万人(東京の半分以下)。税金が高く、その税金で豊かな福祉を可能にしている。

【フィンランド人について】

「生涯学習」という常に何かを学び、生活をより豊かにしていこう、というマインドがある。誰もが対等な「個人」と考え、相手の意見を否定しない。長い間、他国の支配下にいたため、強いアイデンティティを持っている。

【フィンランドが男女平等の背景になった5つのポイント】

1) 戦争が多かった

農業国として女性も昔から労働力として必要とされ、戦争内線も多かったため、女性が男性に代わって働き、家を守らないといけませんでした。女性が社会の中で必要とされている土台作りは昔からありました。

2) 男女は家庭内でも対等

日本では女性が「男性と対等になりたい」と言っているのに対し、家庭内では女性は男性を平等に扱わず、自分たちのテリトリーで家庭を回しているように感じます。

それだと対等とは言えなく、「手伝う」になってしまいます。

本当に社会を平等にしたいであれば、家庭内での上下関係も無くし、家事も育児もフェアーにすべきです。家の中が対等じゃなければ社会も平等になれません。フィンランドの多くの家庭でお財布が別々というのは、「家庭内でも平等」という1つの象徴になりますね。

3) 2000年に初の女性大統領就任

「初の女性大統領」としてハネロン大統領が2000年から2012年までを勤めたことはフィンランドの女性にとってすごく大きな意味がありました。

しかし、国境である福音ルーテル教会の中では女性聖職者に対する理解が遅れています。牧師の仕事に女性が就くべきではない、という考えが根強いですね。

もう一つ残された課題としては、大企業のトップにまだ女性が少ないことです。これらが実現できれば、本当の意味で平等になれると思います。

写真:福音ルーテル教会

4) 福音ルーテル教会

他の北欧諸国同様、国境が「人間は皆(神の前で)平等である」ことを重視する福音ルーテル教会という宗派です。役割は違っても、人に上下はないという考え方は人々の価値観に大きな影響を与えていると思います。

5) well-being国家

北欧はよく「社会福祉国家」と評されていますが、福祉は目的ではなく手段であって、目指しているのは「well-being国家」です。

日本語には「well-being」の概念が存在しないので、あまり知られていませんが、フィンランドでは「福祉」と「well-being」は区別して捉え、年齢、性別、経済状況関係なく、誰もが幸せに暮せる国を目指しています。

次回第2弾「子育ての特徴」は10月14日掲載予定です。

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