【取材レポート後編】記者という職業の魅力とは? Business Insider Japan記者 滝川麻衣子さん
前回に引き続き、Business Insider Japanで記者をされている滝川麻衣子さんの取材レポートです。
今回は、後編。記者としての仕事について伺った内容をお届けいたします。
写真右から3番目:Business Insider Japan記者 滝川麻衣子さん
滝川麻衣子さん:BUSINESS INSIDER JAPAN記者。大学卒業後、産経新聞社入社。広島支局、大阪本社を経て2006年から東京本社経済記者。ファッション、流行、金融、製造業、省庁、働き方の変革など経済ニュースを幅広く取材。 2017年4月からBUSINESS INSIDER JAPANで働き方や生き方をテーマに取材。
~仕事~
Q1:取材対象から話を深く聞き出す方法を教えてください。
滝川さん(以下敬称略):物理的に言えば、その人のことを分かる範囲で全て調べることです。それでも難しいときは、取材をしている中でその人のニーズや考えていることが現すようなキーワードや本心に触れる言葉を探します。その一言を逃さないようにして、そこをより深く聞く。事前に考えていた質問から逸れても良いんです。自分が聞きたいことよりも、その人が話したいと思われることを深堀りすることです。普段から友達と会話しているときにも、相手の本心を少しずつでも探してみる。そのことによって段々取材に限らず、人が話したいことを聞き出すことが可能になっていくと思います。
Q2:時代を先読みした記事を書く極意はありますでしょうか?
滝川:普遍性に気を付けています。拒食症になってしまった人がいるとします。痩せたいという思いから食べるのが怖くなり、びっくりするほど痩せてしまいました。そのとき、これは何かの社会的サインではないかと考えて「メディア上にある、女の子は細くてかわいくなければいけないという価値観が拒食症などを引き起こす原因になってはいないか。助けてほしいという一種のSOSサインではないか。」という仮説を立ててみると当事者だけの問題ではなくなり、そこに普遍性が生まれます。また、実体験からも考えます。例えば、仕事をしながらのワンオペ育児はとても大変ですよね。ここで夫の帰りが遅い原因を考えてみると日本社会では、共働き世帯でも女性が家事・育児を担うことが当然とされている現状が見えてきます。このように、身近にある問題を深堀りして考えることが記事のヒントになることが多いです。未来というより、今を書いているつもりですが、解決策を示し読者へ希望を与えることも必要だと思っています。
Q3:転職を考えている若者が多いと滝川さんの記事で書かれていましたが、滝川さん自身は転職を考えられたことはありますか?
滝川:あります。新聞社は報道に特にスピードが求められるので、担当している分野で何か事件が起きるとそのことに没頭しなければならなくなります。事件が起きるタイミングは選べません。1回大きな事件があっても、その後しばらく事件がなくなるというわけではないので疲れてしまって、限界を感じることも少なくなかったです。子育てをきっかけに2度育児休暇を取り、1年ほど仕事から離れたときに、仕事以外の世界もあるのだと感じました。沢山の人が新聞を読んでいると思っていたのですが、そうでないママ友達にも出会いました。でも彼女にだって悩みはある、と考えた時、ふとカウンセリングの資格を取ろうと思いついて、興味のあった転職や人の働き方に関われるキャリアカウンセラーを目指すことにしました。記者の仕事自体をやめようとしていた時期があったんです。でも、全く仕事を辞めてしまうよりも、同時並行してカウンセリングの資格を取ろうと考え、浜田統括編集長に誘われたBusiness Insider Japanで週4で働きながら学校へ通うことにし、今ではたまに個人的にカウンセリングを受け付けています。
Q4:Business Insider Japan(以下省略)統括編集長の浜田敬子さんとはいつ出会われたのですか?
滝川:新聞社には圧倒的に男性が多くて、特に記者職では女性が占める割合は1割くらい。今は増えてきて採用だと3割くらいになってきていますが、昼夜問わず働かなければいけないので、出産育児をきっかけに離脱する人がすごく多い業界です。最近では記者職でも時短勤務制度をとる女性が増えてきましたが、まだまだどの会社でも圧倒的マイノリティーなので、テレビ、新聞をはじめ雑誌や海外メディアで働く女性たちのネットワークができています。そこに当時朝日新聞に勤めていた浜田統括編集長もいたんです。記者友達の上司でもあったので、仲が良いというわけではなくてもお互いに知り合いでした。そのネットワークを介して私が新聞社を辞めることが浜田統括編集長に伝わったとき、ビジネスインサイダーの日本版を作るにあたって連絡を頂き、学校に通いながら週4で働くことに決めました。辞める前は世間話や社交辞令程度だったので初めてちゃんと話したのはお互いが新聞社を辞める決断をしたときです。
Q5:たくさんのウェブメディアがある中でBIを選んだ理由を教えてください。
滝川:ご縁があったというのももちろんありますが、日本にはカルチャー系のウェブメディアは多くても報道系は少ないんです。自分が経験もあって、好きな報道系のメディアにしたくて選びました。必然的につながりましたし、結果として知り合いもそこに多かったです。
Q6:産経新聞という紙媒体からBIというウェブ媒体に記者として身を置く場所を変えた理由に、紙媒体に限界を感じたという部分もあったのですか?
滝川:新聞社は組織が大きいので急には変われません。新聞がなかなか売れなくなっているのは数字でも明らかですが、印刷工場職員も社員として抱えていたり、販売店の方は、長年の付き合いがあったり、レイアウトを専門職としている人もいるという現状があります。その人たちを「明日から全員解雇です」とはできないし、実際やっていけません。圧倒的に紙を重視しているという指針を表向きには掲げながら、デジタルの子会社などに社員を出向させたりして、本音と建前が合っていない。役員の中でも新聞の売れ行きについての意見は上がっているのですが、いざ変えるとなると難しいんです。変化するには時間がとてもかかり、そのうちに世の中もまた変わってしまってどんどん追いつけなくなる。私は新聞社がとても好きだったので、年々売れなくなっていくのを見ていてとても悲しいです。私は共働きだったので会社を辞められましたが、突然仕事を辞めることなんてできない人たちだっています。その間にも会社はどんどん厳しくなってきているという現状がとても切ないです。
<感想>
今回の取材を通して、記者という仕事を貫いている滝川さんがとてもかっこいいと感じました。特に忙しい仕事をしながら子育ても同時並行で、キャリアカウンセラーの資格も取得されたのは大変だったのではないかと思いました。自分の好きなことを見つけて続けるというのは簡単なことではないです。私たちZ世代も社会課題を見つけ、解決するという大きな目標に向かって前進している人もいれば、なかなか自分のやりたいことを見つけられずに、悩んでいたり、リスクを避けて安全な方向に逃げてしまうという人もいます。私は後者に当てはまっていましたが、滝川さんのように何か一つのことを貫き、人々に夢を与えられるような仕事を将来やりたいという夢を持つことができました。日々社会の問題と向き合い、自分なりに考えながら間接的にでも人のためとなれるように、これから努力していきたいです。記者として世の中の問題を追及、分析されながら、一歩前を進み、夢を与えるようなお話は私たちを勇気づけ、また前進するきっかけを与えてくださいました。貴重な機会をどうもありがとうございました。
Comments